●ダイナミックレンジ(Dレンジ)について(My−CarーLife小林 貢 textより)
ダイナミックレンジとは最も小さな音と最も大きな音の比率(倍率)の事。アンプなどのオーディオ機器ではアンプ自身が発する残留ノイズと最大出力レベルの比ということでdBという単位で表示される。残留ノイズよりも小さな音はノイズに埋もれて聴こえなくなるので残留ノイズが低いアンプやオーディオ機器ほどダイナミックレンジが広いということになるが近年のアンプは残留ノイズが極めて低くなっている。
また自然界の音のダイナミックレンジは諸説あり最大では130dBとする文献もある。そして人間の耳も0dB〜130dBまでの音を認識できるという説がある。古い文献では地下鉄内やガード下の騒音は80dB〜90dBと言われてきたが近年では電車の車両も静粛性を高めているので数dB〜10dB程度は低くなっている可能性がある。また人間は前述のように0〜130dBの音を認識できるとしたが130dB以上の音量になると耳が痛くなったり健康を害したりすることがあるという。また大編成オーケストラのダイナミックレンジも文献によって様々な値が上げられているのだが一般的には115dB程度と言われている。当然ながら、これはステージ至近のポジションの値でありホールの中央や後方の席では100dB以下になるはずだ。
ではCDの規格はというと約96dBでしかない。これではオーケストラの持つダイナミックレンジをそのまま収録することは不可能ということになる。そのため弱音部の微小音は少しブーストして収録し強奏部(合奏部)の最大音量時には幾分音量レベルを下げてCDのDレンジを越えないようにしている。これを人為的に行うのではなく電気的に行うのがリミッターやコンプレッサーというエフェクターだ。実際にメジャー系レーベルのクラシック系ソフトでは明らかにリミッターを使っていると思われるソフトもある。これに対して僕が主宰するウッディクリークや当サイトで度々紹介しているマイスター・レーベルなど音質に拘った独立系レーベルの作品にはCDのダイナミックレンジの広さを十分に生かしたと思えるソフトが数多く存在する。これに対してメジャー系のロックやポップス系ソフトでは常に大きな音で録音しCDのダイナミックレンジを超えるような音量にならないよう日常的にリミッターやコンプレッサーを過度に使って音量を抑えている。むろん、こうしたエフェクターを使った音楽でもフュージョン系やコンテンポラリー系には名録音、好録音の作品は数多く存在する。さらに古いアナログディスクやアナログテープは40dB〜100dB程度(40db以下はスクラッチノイズやテープヒス)約60dB程度のダイナミックレンジでしかなかったが現代主流のCDよりも優秀録音は多かったかもしれない。要するにどんな道具も使い手次第ということだ。一般的な音楽ファンは常に大きな音で記録されているCDをダイナミックレンジが広いと勘違いしがちだが本当にダイナミックレンジが広いのは、微小音は限りなく小さな音で収録し最大音量時でも伸びやかで音を歪ませることない再生音が得られるソフトなのだ。