音楽評論家 小林 貢氏プロデュースWOODY CREEK CD−1009のご紹介です。

(小林 貢氏からのメッセージ)
「本当に音の良いCDが欲しい!」という自分自身の欲求が高まり、それなら自分で作ってしまおうということで興したのがウッディークリーク・レーベルです。音楽の持つ美しく多彩な響きを生かす自然なサウンドという点で名ミキサー、神成芳彦氏と意見の一致がありました。また音の鮮度をできる限り落としたくないということからダイレクト2tr録音というシンプルな手法を探り、かつ一般的なCDでは常識的に使われるリミッターやローカット・フィルターといった帯域コントロールも一切行う事なく個々の音楽をありのままに収録しました。
再生するオーディオ機器のパフォーマンスが高ければ高いほどリアルな質感と音像、音場感を得ることができるはずです。

本レーベルWOODY CREEKでは初のヴォーカル作品です。
ボーカリストはアイルランド生まれのイギリス人ウィリアム・シルク
日本デビュー作となります。
録音は例によって何の加工もしない一発録音ですので実力のある人でないと務まらないので、これまでヴォーカルは採り上げていませんでした。

本レーベル14曲のメイン・トラックはすべてデジタルのDSD音源ですが、ボーナス・トラックとして収録した15曲目の「Witchcraft」はStuderA810の2tr・76cm/secのアナログ・マスター音源です。
この2つの音の違いを聴き比べるのはオーディオ的な楽しみと思います。
そしてボーナス・トラックの2曲目は井上陽水の作った名曲「少年時代」、これにウィリアムがオリジナルの英詞をつけて歌っています。
ジャズ・ファンでなくても楽しめる内容になっていると思います。


(当店からのメッセージ)
WOODY CREEKのような自然に近い音源(録音)の良いレーベルは希少価値高くなかなか存在しません。これはハイエンドオーディオに目覚めた方ならご存じかとと思いますが実際にオーディオ機器を通じる音声はCDに書き込まれたデジタル信号を基に再生されるため、一般的なメジャー系レーベルでは録音方法に問題があり自然な音で再生することは不可能です。さらにオーディオ機器の音の良さを確認することも困難です。
最も良く出来たシステムの場合で視聴すると結果は明らかで曲によって音が良かったり悪かったりする原因はCDの録音の悪さ、加工方法、ダイナミックレンジの狭さが原因とされます。
WOODY CREEKのレーベルでいうダイナミックレンジの広さの意味合いは小林 貢氏のTEXTに記載されています。

●ダイナミックレンジ(Dレンジ)について(My−CarーLife小林 貢 textより)

ダイナミックレンジとは最も小さな音と最も大きな音の比率(倍率)の事。アンプなどのオーディオ機器ではアンプ自身が発する残留ノイズと最大出力レベルの比ということでdBという単位で表示される。残留ノイズよりも小さな音はノイズに埋もれて聴こえなくなるので残留ノイズが低いアンプやオーディオ機器ほどダイナミックレンジが広いということになるが近年のアンプは残留ノイズが極めて低くなっている。

また自然界の音のダイナミックレンジは諸説あり最大では130dBとする文献もある。そして人間の耳も0dB〜130dBまでの音を認識できるという説がある。古い文献では地下鉄内やガード下の騒音は80dB〜90dBと言われてきたが近年では電車の車両も静粛性を高めているので数dB〜10dB程度は低くなっている可能性がある。また人間は前述のように0〜130dBの音を認識できるとしたが130dB以上の音量になると耳が痛くなったり健康を害したりすることがあるという。また大編成オーケストラのダイナミックレンジも文献によって様々な値が上げられているのだが一般的には115dB程度と言われている。当然ながら、これはステージ至近のポジションの値でありホールの中央や後方の席では100dB以下になるはずだ。

ではCDの規格はというと約96dBでしかない。これではオーケストラの持つダイナミックレンジをそのまま収録することは不可能ということになる。そのため弱音部の微小音は少しブーストして収録し強奏部(合奏部)の最大音量時には幾分音量レベルを下げてCDのDレンジを越えないようにしている。これを人為的に行うのではなく電気的に行うのがリミッターやコンプレッサーというエフェクターだ。実際にメジャー系レーベルのクラシック系ソフトでは明らかにリミッターを使っていると思われるソフトもある。これに対して僕が主宰するウッディクリークや当サイトで度々紹介しているマイスター・レーベルなど音質に拘った独立系レーベルの作品にはCDのダイナミックレンジの広さを十分に生かしたと思えるソフトが数多く存在する。これに対してメジャー系のロックやポップス系ソフトでは常に大きな音で録音しCDのダイナミックレンジを超えるような音量にならないよう日常的にリミッターやコンプレッサーを過度に使って音量を抑えている。むろん、こうしたエフェクターを使った音楽でもフュージョン系やコンテンポラリー系には名録音、好録音の作品は数多く存在する。さらに古いアナログディスクやアナログテープは40dB〜100dB程度(40db以下はスクラッチノイズやテープヒス)約60dB程度のダイナミックレンジでしかなかったが現代主流のCDよりも優秀録音は多かったかもしれない。要するにどんな道具も使い手次第ということだ。一般的な音楽ファンは常に大きな音で記録されているCDをダイナミックレンジが広いと勘違いしがちだが本当にダイナミックレンジが広いのは、微小音は限りなく小さな音で収録し最大音量時でも伸びやかで音を歪ませることない再生音が得られるソフトなのだ。


ということで、ぜひ皆様もお手元に一枚置いて頂き、自身のリファレンス用としてお役立てください。